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「心魂」の美学

Life Heart Message 2018.11.26

 

ミケランジェロがかつて一枚の下絵に書いたペトラルカの引用文、「死は暗き牢獄の終末である」を引いていた。彼が1564 年に死亡したとき、4 体の未完の「奴隷」彫刻が残されている。この彫刻は教皇ユリウス2 世の大墓廟を飾るための作品であったが、計画はいくども変更されていくなかで、なにかを守り残そうと試み、そしてある面で最初の計画よりも遥かに荘重で大きな記念碑的作品となった。

 

法王に支配された(ローマ教会に従順な)諸地方を擬人化や、学芸の自由を擬人化した彫刻なのか、本能に閉じ込められたままの救われることのない人間の魂を象徴する彫刻であったのか、また死と生の存続にかんするキリスト教的思想と異教(新プラトン)的思想の総合を表そうとした奴隷像であったのかも知れない。この4 体の奴隷像はすでに16 世紀から賛美の対象とされた。

 

フランチェスコ・ボッキは次のように書き残している。「これらの像はわれわれの理解をこえた、驚くほど巧妙な技術を駆使して生み出されている。まるで奴隷たちは力強く迫ってくる混沌の状態から逃れたがっているかのように見える。芸術に携わる者は皆、一人の人間がこれほどの能力をもち合わせ、自由な手でいろいろとノミをもち替え、かかる荒削りの人間像をつくり上げたことに、驚嘆する」。

この作品に影響を受けたロダンは、「ミケランジェロはゴシック美術の最後で最大の人物だ。

 

かれの奴隷像は、簡単に切れそうな、弱い綱で繋がれている。だが、この彫刻家は、奴隷たちを繋いでいる拘束が精神的なものであることをしめそうとした。ミケランジェロの制作した奴隷たちは、それぞれが人間の魂であり、限りなき自由を得ようともがき、魂をおおう肉体という衣をずたずたに引き裂いてしまおうとしていたのだ」。これは、魂は肉体のなかに幽閉されており、物質にとらえられている。万身の力を込めたわずかな動作が、奴隷の苦悩をいかに雄弁にわたしたちに語りかけていることか。他の芸術家のどんな完成作品も遥かに及ばない。魂が物質の奴隷的拘束となる牢獄がいかに頑強であるかをしめしている。だが人間の魂は神聖である。

 

思想的にフィチーノに感化を受けたミケランジェロの詩に、“感覚的な美は人の目を引きつけるにすぎない。が、魂はちがう。

 

魂は神のごとく、おのが高揚を知る。

魂ははかなき束の間のものを決して祝福しない。

はかなく死ぬべき運命のものは決して不動と思えない。

永遠の熱望こそが人を導く。

やがて、現世の装いを変えるために。

わたしの目は美を捜し、同時に

魂の祝福とを求める。

さらに天上への道も捜し求める。

すると高き天上から、微光が流れくだり、

その光は人間の願望を

星に向かって引き上げる。

地上ではそれを愛と呼ぶ”

ここで愛と美が結びつくことを謳っている。