「奇跡」の美学

Life Heart Message2016.01.16

 

駐車場の近くで、老人が鳥にエサをやっていた。駐車場に車を入れようとした出版社の社長が遮断機が故障していたため困っていた。鳥にエサをやっていた見知らぬ老人が「手伝いましょう」と困っているのをみかねて重い遮断機を上げて、車が入るのを助けてくれた。老人に感謝の言葉を述べようと、ゲートを振りかえったが、駐車場の救世主はどこにも見当たらなかった。

 

「すべての高貴な仕事は最初、不可能に見える」とカーライルは書いている、と言った老人が気になり、数日後再会。老人の侘び住まいに招かれる。小さな居間の本棚には、ウィル・デェラントの「シーザーとキリスト」、ジブランの本、ブルタークの「英雄伝」、フルトンやアイズリーの「予想外の宇宙」、セルバンテスの「ドン・キホーテ」、アリストテレスの「形而上学」、フランクリンの「自伝」などのすばらしい蔵書であった。

 

老人は、これらの本は、ほかの本とは一線を画す共通性があると言った。“この世で一番の奇跡”ともいえる“神の手”のかかった本だと呼んでいた。老人は古代から現代まで言いつがれている賢人を引っ張り出し、生きながら死んだ状態の人を蘇るのを手伝うラグピッカーとして、人生を変える勇気をあたえていた。「心は独自の座を占めており、それ自体で、とんでもない地獄を生みだすこともできれば、素晴らしい天国を生みだすこともできる」と言ったミルトンがもっとも好きだ。わしらの心は地上で最高の創造物なのだ。セネカは「どんなに豊かな土壌でも、耕さなければ、実りをもたらさない。人の心も同じである」と。

 

出版社の社長は5か月間、老人のドラマチックに語るすばらしい人生大学に通った。マーク・トウェインを引きあいにだし、「一つの体験からすべての知恵を引きださんよう注意すべきだ…熱いレンジの蓋に座った猫にならないようにな。その猫は2度とふたたび熱いレンジの蓋に座らんだろう。それはいい…しかし、冷たいレンジの蓋にも2度と座らんだろう」

 

エマーソンは「私たちの強さは弱さから生まれる。秘密の力を備えた憤りは、こっぴどい攻撃にさらされ、刺されたりするまでは目覚めない。人は苦しめられ打ち負かされるとき、なにかを学ぶチャンスを得る。才覚を発揮すること、勇気をもつこと、事実をつかむこと、無知を知ること、節度や生きるための本当の技術を獲得することなどを」1オンスの金を産出するために何トンもの岩石が必要なこと。苦労に苦労を重ねて獲得したものこそ、もっとも長持する。自分の枠を超えて奉仕すれば必ず報われる。

 

原因と結果、手段と目的、種と果実、これらは引き離すことはできない。結果はすでに原因のなかに咲いている。目的はすでに手段の中に存在し、果実はつねに種のなかにある。

 

「もし世界から50歳以上の人たちの経験と判断をすべて取り除いてしまったら、世界を動かす脳も才能も残らないだろう」「明け方の夢のように、長く生きれば生きるほど、人生は明るくなり、物事の道理が鮮明になる」考える力。愛する力。意志の力。笑う力。想像する力。創造する力。計画をする力。話す力。祈る力。天使さえもっていない偉大な力、それは選択する力だ。

 

老人の数々の教え…貴重なインスピレーションと知恵と希望の時間を得た感動を、一冊の本として出版する。

 

「この世で一番の奇跡」として…