「審美化」の美学

Life Heart Message 2017.09.25

 

私たちは今、世界の審美化(aesthetic)という一般的な現象に立ち会っている。それはまず世界が美しくなったということで、化粧、フィットネスクラブ、美容外科などによって美化された個人の身体から、市街中心部が入念に改修され、都市のあらゆるところが建築界の著名人に委ねられ美化されている。過去のいくつかの美的な企ても、人類の幸福を期待され世界の美化を標榜していた。

 

英国のアーツ・アンド・クラフツ運動や、ドイツのバウハウスは美的な価値を日常生活に統合しようと努めた。そして、美が人間の感覚的な諸能力と知的な諸能力との調和のうちに合致させることを期待したシラーと同じように、これらの運動は、世界が事物や場所の美しさによって改良され、完成されることを信じてやまなかった。

 

世界の審美化は眼差しと態度の審美化で、客体に対してだけでなく、主体に関わるものであり、態度、注意、眼差し、判断であり、それらは距離、無関心性、軽さ、無償性、見かけへの気遣い、快適さ、高尚な快によって性格づけられてきたのであった。

 

音一般に対して楽音を過大評価することを拒否したジョン・ゲージは、芸術を過小評価するのではなく、むしろ非芸術的なアイステーシス(潮騒や列車の音など、自然あるいは人工的なものに向かう感性)を注意の高みにまで引き上げて、作品はもはや芸術にあるのではなく「私たちが自分の環境を生きるしかた」を示したのであった。

 

現代音楽の巨人テリー・ライリー(80 歳)が、若手アーチスト寒川裕人とザ・ユージーン・スタジオの共同プロジェクトの「After the War」は、上映時の「今日」と同じ日付の過去に、世界のどこかで起こっていたWar(国家、地域間の争いである戦争以外に、軍事、闘争、敵対関係・状態等の意味を含む)に関する映像がWeb サイト上に無音で流れ続けるという作品は、世界的に注目され、「SUPER VISION」と銘打たれたプロジェクトは、寒川氏による「After the War」と「from the future」という2 つの映像作品を会場全体に投影し、ライリーの演奏と相互に影響を与え合いながら変化させていく。音と映像によるまったく新しい試みは、本来は無関係であった「2つの場所/2つの出来事」はつながり、「ドキュメンタリー」と「フィクション」、「愚かな人間の営み」と「変わらない自然」との対比を通じて、現在の立ち位置を暗示している。

 

世界が直面している「軍事的脅威」「環境問題」「経済危機」、そして「意識及び意味の危機」を回避するためには、技術が大きな社会変革を起こす時こそ、「他との違いを認め許容・共存する」考え方や「複眼的、多視点」であることが何よりも重要であろう。この世の誰もが尊い存在なのだ。

 

ゲーテは言った。「かの一は、永遠に一であろう。多に分かれても、一。永遠に唯一のもの。一の中に多を見いだせ。多を一のように感ぜよ。そうすれば、芸術の初めと終わりが得られる。」