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「簡潔」の美学

Life Heart Message 2018.02.12

 

1893 年、シカゴで開かれたコロンブス記念世界博覧会において公式的に参加した日本は、パビリオンとして、宇治平等院の鳳凰堂を模した鳳凰殿を建てた、この鳳凰殿に多くの人たちが強い感銘を受けたが、そのなかに、やがて日本建築の特性を積極的に取り入れ、アメリカの伝統や風土に根ざした「プレイリー・ハウス」や「オーガニック・アーキテクチャー」をいっそう豊かなものとすることになる建築家フランク・ロイド・ライトがいた。

 

ライトはむさぼるように見入った。木造の柱、梁、深い屋根の軒の出、真壁の真白い漆喰、家と自然との密接な関係、これらはすべて彼に深い印象を与えた。ライトが日本の美術に初めて強く惹かれたのは、以前に浮世絵版画を見たときだった。平面性をよく活かした簡潔な表現の仕方に注目し、そこから、不要なものをきっぱり取り除くことを現代にふさわしい抽象的な表現として学びとり、建築に適応させようとしたのだが、同様のことは、やがて日本の家屋からもっと切実に感じることとなった。

 

「日本的な物事を、より深く知るようになるにつれて、わたしは日本の家屋をエリミネーション――下劣なものを取り除くばかりでなく、無意味なものを追いはらう――の研究には至上のものと考えるようになった。だから当然わたしは日本の家屋に魅惑された。……どんな些細いなものも装飾を有効にするように位置に加えられている。……建物を作るのに使っている簡潔な材料の美しさ、また、みがき上げるように施されている。清潔さをここに再び見る思い

である。(中略)ついにわたしはこの地球上に、一つの国を発見したのである。単純さが当然のことながら最高である国を。これから日本家屋の床は、すべてその上で生活するように作らている――その上で眠り、そこで食事をし、柔らかなすべすべした畳の上にすわり、そして瞑想する。笛を吹くのも畳の上なら、恋をささやき、愛を語るのも畳の上である。日本家屋においては、どんな物もこの神聖な床の上にいつまでも固定した物として置くことは許されない。

 

家族が使う物は、すべて使っていないときには動かせるようにデザインされ、しかるべき場所に注意深く納められる。いろいろな物は、ただ適切なときに正しく使ってこそ美しいものである」と、自伝に記していた。

 

帝国ホテルの設計のため、1915 年から21 年までの間、日本に滞在したこともあるだけに、ライトは、素材の簡素な美しさや素材特有の性質を積極的に活かしたように、「物資への真実」を大切にし、自然から出発し、自然に根ざして想を得た。

 

彼は、山川草木や、地・水・火・風・空の五大種の自然のみならず、「あらゆる原因結果の内部的要素」という意味での自然の動きや生命を探求しながら、想像力の働きと感性の自由な発現を活かしつつ、人々の根源的な普遍的な真理を発見し、たえず自己を革新していったのではなかろうか。……